雑記ふたたび

nyanの日記ブログ。主に最近描いた絵や自作小説の話など。

映画:オリバー!


U-NEXTで視聴。1968年制作のイギリスのミュージカル映画
原作はチャールズ・ディケンズの「オリバー・ツイスト」。
(2005年同じ原作でロマン・ポランスキー監督も「オリバー・ツイスト」を撮っています。)
監督はキャロル・リード(「第三の男」など)。主演はマーク・レスター
1969年第41回アカデミー賞11部門ノミネート、6部門受賞。

<あらすじ>
救貧院で生まれた少年オリバー・ツイストはある日仲間とのくじ引きで負け、経営者のコーネイ未亡人とバンブル氏に食事のお替りを要求する羽目になる。意を決して「もっと下さい」と食器を差し出したオリバーは、罰として葬儀屋に二束三文で売られてしまう。そこで死んだ母親の悪口を言われ大喧嘩。閉じ込められた地下室から脱出し、通りかかった馬車にこっそり便乗してロンドンへ。そこですりの少年ドジャーと出会い、フィギン老人の仕切るすり仲間に誘われるが……。

と、前半粗筋を見ても異様なくらいに「巻き込まれ体質」のオリバー。
母親の悪口を言われて大暴れした以外は、自発的に何かする訳でもないのに、ひたすら周囲のもたらす運命に翻弄される。オリバーが大人しい上に、10歳ほどの幼い子供だという事もあるんでしょうけれど。
ミュージカル映画だから楽しい歌や踊りも多いですが、19世紀のイギリスの労働者階級や貧困層の生活の描き方が秀逸だと思いました。
調べてみると原作者のディケンズがこの作品を「救貧院」のシステムの問題点を皮肉っているらしく、オリバーの周囲で悪い大人たちが暗躍する話になっていたっぽいです。

ロンドンに着いてからも、ひたすらオリバーは巻き込まれ続ける。
ドジャーたちがすりを働いた際に、一緒にいただけのオリバーが逃げ遅れて捕まり、法廷へ。けなげにすり仲間の事は黙秘で通したが、何とか目撃証言で無罪放免。その際にすりの被害者の紳士・ブラウンローがオリバーに同情してて、家に連れ帰る。やっと落ち着いた生活を手に入れたのに、すり仲間たちのリーダー各の青年ビルが「奴が我々の事を喋れば一巻の終わり」と、無理矢理連れ戻す。再び犯罪に巻き込まれるオリバー。ビルの恋人である優しいナンシーがブラウンロー氏の元へ逃がそうとするが、途中でばれてビルに殺されてしまう。再びビルに捕まったオリバーは今度は逃走のための人質にされてしまう。
最後はブラウンロー氏の元に戻り(途中彼がオリバーの祖父だと分かる)大団円。

とにかく周囲が勝手にオリバーの人生を振り回し続けるのがちょっと妙な感じだった。最近見た19世紀イギリスの話で「秘密の花園」は中流階級以上の生活をメインに描写した作品だったんですが、この映画はブラウンロー氏の元での生活はさらっと描かれるだけでした。「テンプルちゃんの小公女」も一応主人公が両極端な生活に変わる様子を描いていましたが、裕福な時間の方が長い。それにしても天才少女シャーリー・テンプル主演の「小公女」は1939年アカデミー賞にかすりもしなかったことを思うと、6部門入賞したこの映画は凄いのかも知れません。

※ちなみに1939年はシャーリー・テンプルが演じるはずだった「オズの魔法使」が作曲賞、歌曲賞、特別賞を受賞。一番多い受賞が「風と共に去りぬ」。他にも名作が山のようにあったアカデミー賞の激戦年だから「小公女」がノミネートさえしなかったのも仕方ない気がする。

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